税務・お金の基礎

開業届と青色申告の基礎|フリーランスエンジニアの最初の手続き

開業届と青色申告承認申請書は、いつ、どこに出すのか。青色申告で受けられる扱いと、開業時にあわせて済ませておきたい手続きを、最初の一年の流れに沿って整理します。

文:Partners 編集部3

会社を辞めて個人で仕事を受け始めるとき、最初に出てくるのが「開業届」と「青色申告」です。どちらも難しい書類ではありませんが、提出のタイミングを逃すと、その年に受けられる扱いが変わることがあります。最初の一年の流れに沿って整理します。

なお、以下は本稿執筆時点の一般的な枠組みです。期限や様式、金額の要件は改正されることがあります。最新の内容は必ず国税庁の公式案内で確認してください。

開業届は何のために出すのか

正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。事業を始めたことを税務署に知らせる書類で、事業を開始した日から一定期間内に提出することとされています。書式は国税庁のサイトから入手でき、税務署の窓口、郵送、電子申告のいずれでも提出できます。

提出しておくと、屋号での銀行口座を開設しやすくなる、小規模企業共済などの申し込みで開業の事実を示しやすくなる、といった実務上の利点もあります。

一点だけ注意があります。開業届を出すこと自体が、そのまま失業給付の扱いに影響する場合があります。 退職直後で給付を検討している方は、提出前にハローワークに確認してください。

青色申告承認申請書は開業届とセットで

青色申告をしたい場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を別に出します。開業届と同時に提出できるので、まとめて出してしまうのが簡単です。

この申請には提出期限があり、その年について青色申告をするには、原則としてその年の一定の日までに提出する必要があります。年の途中で開業した場合には、開業日を基準にした別の期限が設けられています。期限を過ぎると、その年は白色申告になります。 具体的な日付は国税庁の案内で確認してください。

青色申告で受けられる主な扱い

青色申告を選ぶと、白色申告にはない扱いがいくつか用意されています。代表的なものは次のとおりです。

  • 青色申告特別控除:一定の要件を満たす帳簿づけと申告方法によって、所得から控除を受けられます。控除額は帳簿の付け方と申告方法によって段階が分かれており、複式簿記で記帳したうえで電子申告などの要件を満たすと、最も大きい額になります。
  • 純損失の繰越控除:赤字が出た年の損失を、翌年以降の一定期間、黒字と相殺できます。開業初年度に設備投資が重なる場合に効いてきます。
  • 少額減価償却資産の特例:一定額未満の資産について、購入した年に一括で経費にできる制度です。年間の上限額が定められています。
  • 青色事業専従者給与:生計を一にする家族に払う給与を、届け出のうえ経費にできます。

いずれも要件があります。控除額の段階や上限額は改正の対象になりやすい部分なので、金額を前提に判断する前に国税庁の案内を見てください。

開業時にあわせて済ませること

税務署の手続き以外にも、退職直後にやることがあります。

  1. 国民健康保険または任意継続の選択:会社の健康保険を任意継続するか、国民健康保険に切り替えるかを選びます。どちらの保険料が安いかは前年の所得や扶養の状況で変わるので、両方を試算してから決めます。手続きには期限があります。
  2. 国民年金への切り替え:厚生年金から国民年金に変わります。市区町村の窓口で手続きします。
  3. 事業用の口座を分ける:生活費と混ざると、後の記帳が一気に面倒になります。開業時に分けておくのが最も楽です。
  4. 会計ソフトを決める:複式簿記での記帳は、手書きより会計ソフトのほうが現実的です。
  5. 請求書と証憑の保存方法を決める:電子でやり取りした取引データの保存については、法令上のルールが定められています。運用の詳細は国税庁の案内を確認してください。

この状態になっていたら見直す

  • レシートを財布に入れたまま数か月放置している
  • 事業の入出金と生活費が同じ口座で混ざっている
  • 帳簿を年明けにまとめてつけようとしている
  • 事業所得として申告するつもりだが、帳簿を作っていない

最後の点は特に重要です。所得の区分の判定にあたっては、帳簿書類の保存状況が考慮されると説明されています。記帳と保存を続けておくこと自体が、後から効いてきます。

迷ったら早めに相談する

最初の一年は判断材料が少なく、迷う場面が多くなります。税務署では申告相談を受け付けており、各地の税理士会でも相談の機会が用意されています。売上の規模が大きくなってきた段階で、税理士に依頼するかを検討するのも自然な流れです。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法務判断については、税理士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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