支払サイトと資金繰り|60日サイトで手元のお金に何が起きるか
月末締め翌々月末払いだと、初回入金は働き始めてから3か月後です。開始時に必要な運転資金、サイトの違いが年間に生む差、税金の支払時期と重なるキャッシュの谷を計算例で確認します。
単価が高くても資金が続かなければ、案件を続けられません。フリーランスとして独立した直後につまずきやすいのが、支払サイトによる入金の遅れです。
支払サイトとは、締め日から入金日までの期間のことです。「月末締め翌月末払い」なら30日サイト、「月末締め翌々月末払い」なら60日サイトと呼ばれます。会社員のときは働いた月の翌月に給与が入りましたが、フリーランスでは違います。
60日サイトで初回入金はいつになるか
4月1日に稼働を開始し、月末締め翌々月末払いの契約だとします。
- 4月1日〜4月30日 — 稼働。この時点で収入はゼロ
- 4月30日 — 締め。請求書を提出
- 5月1日〜5月31日 — 稼働。まだ入金なし
- 6月30日 — 4月分がようやく入金
- 7月31日 — 5月分が入金
働き始めてから最初の入金まで、約3か月かかります。4月・5月・6月の前半までは、貯蓄を取り崩して生活することになります。
30日サイトなら5月31日に4月分が入金されるので、無収入期間は約2か月です。この1か月の差は、独立直後には大きな意味を持ちます。
開始時に必要な運転資金を計算する
必要額は次の式で概算できます。
必要運転資金 = 月の支出 ×(無収入期間の月数 + 予備1〜2か月)
月の支出が30万円(家賃、生活費、国民健康保険、国民年金、通信費などを含む)の場合を計算します。
- 30日サイト:30万 × (2 + 2) = 120万円
- 60日サイト:30万 × (3 + 2) = 150万円
- 90日サイト:30万 × (4 + 2) = 180万円
予備を2か月分としたのは、案件が想定より遅く始まる、入金が数日ずれる、体調を崩して稼働できない、といったことが実際に起きるからです。予備を削ると、1回のトラブルで資金が尽きます。
さらに、独立初年度は前年の所得に対する住民税や国民健康保険料の支払いが重なることがあります。会社員時代の給与水準で計算された金額が、収入の少ない時期に請求されるためです。ここは見落としやすいので、上の必要額とは別に見ておいてください。
サイトの違いは年間でいくらの差になるか
支払サイトは、支払われる総額そのものを変えるわけではありません。変えるのは「いつ手元にあるか」です。ただし、次の点で実質的な差になります。
月額70万円の案件で比較します。
- 30日サイト — 常に1か月分(70万円)が未入金の状態
- 60日サイト — 常に2か月分(140万円)が未入金の状態
- 90日サイト — 常に3か月分(210万円)が未入金の状態
60日サイトでは、稼働している限りずっと140万円を相手に預けている状態になります。これは実質的に、無利子で資金を貸しているのと同じです。もしこの間に生活費が足りず、年利15パーセントのカードローンで50万円を3か月借りたとすると、利息は 500,000 × 0.15 × (3 ÷ 12) = 約18,750円。単価は同じでも、手元の現金は減ります。
さらに、契約終了時のリスクも変わります。60日サイトの案件が突然終了した場合、最後の入金までさらに2か月かかります。その間に次の案件が始まらなければ、無収入期間が再び発生します。
資金繰り表を1枚つくる
エクセルでも紙でも構いません。12か月分の行を用意し、次の列を埋めます。
- 月
- 入金予定額と入金日 — 稼働月ではなく、実際に振り込まれる月に書く
- 固定支出 — 家賃、通信、保険、年金
- 変動支出 — 生活費、交通費、機材
- 税・社会保険の支払 — 所得税の予定納税、住民税、国民健康保険料、消費税
- 月末残高
ポイントは2番です。稼働した月ではなく入金される月に書くこと。ここを間違えると資金繰り表の意味がなくなります。月末残高がマイナスになる月が見えたら、そこが手を打つべき地点です。
税金の支払時期と重なるキャッシュの谷
支払いが集中しやすい時期があります。おおまかには次のような並びです。
- 2月〜3月 — 所得税の確定申告と納付
- 6月頃 — 住民税の第1期(一括か4期分割かを選択)
- 6月〜7月頃 — 国民健康保険料の通知と納付開始
- 7月と11月 — 所得税の予定納税(前年の納税額が一定以上の場合)
- 消費税 — 課税事業者の場合、翌年3月末までに申告・納付
前年の所得が高かった年の翌年は、収入が下がっていても前年基準で請求されます。売上が良かった翌年に資金が苦しくなるのは、この時間差が原因です。
対策は単純で、入金のたびに一定割合を別口座へ移しておくことです。所得や控除の状況によって適正な割合は変わりますが、売上の一定割合をあらかじめ分けておく習慣があるだけで、納付月の慌て方がまったく違います。
なお、税金や社会保険の具体的な計算、事業形態の選択、控除の適用可否は、個々の状況によって結論が変わります。ここに書いたのは一般的な情報であり、個別の判断は税理士や税務署に確認してください。
契約前に確認する支払条件
- 締め日と支払日 — 「月末締め翌月末払い」のように文面で確認する
- 支払日が休日の場合の扱い — 前倒しか後ろ倒しか
- 請求書の提出期限と提出先 — 遅れると1か月ずれることがある
- 振込手数料の負担 — 自分負担なら毎月数百円が積み上がる
- 消費税の扱い — 単価が税込みか税抜きかを必ず確認する
- 契約終了時の最終支払日
税込みか税抜きかの確認は特に重要です。月額70万円が税抜きなら実際の請求額は77万円、税込みなら約63.6万円が本体価格です。同じ「70万円」でも7万円の差になります。口頭のやり取りでは省略されやすいので、契約書の記載を見てください。
支払サイトは交渉できる場合があります。単価が動かないときでも、60日を30日に短縮できれば、資金繰りの余裕は1か月分増えます。Partners では案件情報に支払条件を明示するようにしているので、比較の材料にしてください。
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