単価交渉の進め方|切り出すタイミング・根拠・伝え方
単価交渉は勢いではなく準備で決まります。切り出すタイミング、根拠になる3つの材料、金額の出し方、断られたときの二段構えまでを、実際の数字を使った例で具体的に解説します。
単価交渉がうまくいかない理由の多くは、話し方ではなく準備にあります。「そろそろ上げてほしい」とだけ伝えても、相手には稟議を通す材料がありません。逆に、相手が社内で説明できる材料を渡せれば、交渉は事務手続きに近づきます。
この記事では、タイミング、材料、金額の出し方、伝え方、断られたときの動き方を順に整理します。なお、交渉すれば必ず単価が上がるわけではありません。案件側の予算枠が固定されている場合、どれだけ材料を揃えても動かないこともあります。
交渉が通りやすいタイミングは決まっている
交渉には通りやすい時期と通りにくい時期があります。通りやすいのは次のような場面です。
- 契約更新の1〜2か月前 — もっとも自然な機会です。更新月の直前だと予算調整が間に合わないため、余裕を持って切り出します。
- 担当範囲が実際に広がった直後 — 設計を任された、レビュー担当になった、新メンバーの立ち上げをした、といった変化の後。
- 相手の期の変わり目の少し前 — 予算が組まれる前なら枠に入れてもらえる可能性があります。
- 後任が立てにくい状況が明確なとき — 交渉材料としては強いですが、圧力として使うと関係が悪化します。事実として共有するにとどめます。
逆に、参画から3か月未満、大きな障害の直後、相手が体制縮小を検討している時期は避けたほうが無難です。
交渉の前に用意する3つの材料
1つ目は、担当範囲の変化の記録です。
参画当初の合意内容と、現在の実態を並べます。
- 参画時:既存機能の改修と不具合対応
- 現在:改修に加えて、新規機能の設計、DB設計レビュー、新規参画者のオンボーディング
「やることが増えました」ではなく、「当初のスコープはAでしたが、現在はA+B+Cを担当しています」と並べると、相手も社内で説明しやすくなります。
2つ目は、成果の数値化です。
数字は大きさより具体性が大事です。誇張は不要で、確認できる範囲で十分です。
- バッチ処理の実行時間を約40分から約12分に短縮
- 月あたり平均15件発生していた問い合わせ起因の障害対応を、原因修正により月3件程度まで削減
- テストの自動化により、リリース前の手動確認を半日から1時間程度に短縮
3つ目は、相場との比較です。
「他社ではもっと高い」という言い方は角が立ちます。「同条件の案件で提示されている水準」という事実の共有にとどめます。数字には幅があり、商流や地域で変わることも添えたほうが誠実です。
金額の出し方を計算する
現在の単価が月70万円で、80万円を目指す場合を考えます。
- 希望額:80万円(上げ幅 10万円、約14パーセント増)
- 提示する金額:85万円
- 譲れない下限:76万円
いきなり希望額を出すと、そこから削られて希望を下回ります。希望額より少し上を提示し、下限を自分の中で決めておくのが基本です。ただし、上げ幅が大きすぎると検討自体が止まります。目安として、1回の更新での上げ幅は現単価の10〜20パーセント程度に収めると、話が進みやすくなります。70万円から一気に100万円(43パーセント増)を求めると、多くの場合は稟議の前に止まります。
下限を決めておく理由は、その場で判断しないためです。「76万円を下回るなら継続しない」と事前に決めておけば、押し切られる余地がなくなります。
伝え方の型
口頭でもメールでも、次の順番で組み立てると伝わりやすくなります。
- 継続の意思を先に示す — 「引き続き携わりたいと考えています」
- 担当範囲の変化を事実として述べる — 「参画当初と比べ、現在は設計とレビューも担当しています」
- 金額を明示する — 「次回更新にあたり、月額85万円でご相談させてください」
- 相手に検討の余地を残す — 「ご事情もあるかと思いますので、一度ご確認いただけますと幸いです」
避けたいのは、金額を言わずに「もう少し上げていただけると」と濁すことです。相手は金額を決められず、社内にも上げられません。数字は自分から出します。
断られたときの二段構え
金額が動かないときは、金額以外の条件で交渉できます。これは妥協ではなく、実質的な条件改善です。
- 精算幅の調整 — 140〜180時間を150〜190時間に変えられれば、超過控除のリスクが下がります。
- 稼働日数の削減 — 週5日を週4日にできれば、単価が同額でも実効時給は上がります。
- リモート比率 — 週2出社を週1にできれば、往復の時間と交通費が減ります。
- 支払サイトの短縮 — 60日サイトを30日にできれば、資金繰りが楽になります。
- 次回の見直し時期を約束してもらう — 「今期は難しいが、次期の予算で検討する」を口頭でなく文面で残します。
例えば月70万円で週5日(月20日)稼働から週4日(月16日)稼働に変更し、単価が60万円になった場合、日額は3.5万円から3.75万円に上がっています。空いた1日を別案件や学習に充てられるなら、実質的にはプラスです。
やってはいけない交渉
- 他案件の提示額を切り札として突きつける — 事実として共有するのは構いませんが、「明日までに回答がなければ抜けます」といった形にすると、更新自体が見送られます。
- 感情で押す — 「これだけやったのに」は相手の稟議材料になりません。
- 口約束で終える — 合意した内容は必ずメールなど文面に残します。「次回は前向きに」は記録がなければ存在しないのと同じです。
- 商流の途中を飛ばして発注元に直接交渉する — 契約違反になる場合があります。まずは契約相手に話します。
交渉は一度きりの勝負ではありません。今回通らなくても、材料を残し関係を維持しておけば、次の更新や次の案件で効いてきます。単価は一度の交渉より、記録を積み重ねた回数で動きます。
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