商流と中間マージン|同じ案件で単価が変わる理由
発注元が用意した予算のうち、いくらが実際に届くのか。一次請け・二次請けの構造と中間マージンの計算方法、企業側から見たコストまでを整理し、商流を確認するための質問も紹介します。
同じシステムの同じ工程を担当しているのに、隣の席のエンジニアと単価が20万円違う。そんなことが起きるのは、多くの場合、能力差ではなく商流の違いによるものです。
商流とは、発注元(エンドユーザー企業)から実際に作業する人まで、契約がどう連なっているかの経路のことです。この経路に会社が入るたび、その会社の取り分が引かれていきます。
商流の基本構造
もっとも単純な形はこうなります。
- 直接契約 — 発注元 → エンジニア。間に会社が入りません。
- 1社経由 — 発注元 → 一次請け(受託会社やエージェント) → エンジニア。
- 2社経由 — 発注元 → 一次請け → 二次請け → エンジニア。
- 3社以上 — 発注元 → 一次 → 二次 → 三次 → エンジニア。
「一次請け」「二次請け」という言い方は、発注元から数えて何番目の契約かを指しています。自分が三次請けの位置にいる場合、発注元との間に2社が入っていることになります。
中間マージンを計算してみる
発注元が1人あたり月100万円の予算を確保している案件を例にします。各社のマージン率を仮に置いて計算します。
- 一次請けが20パーセント取得:100万 − 20万 = 80万円
- 二次請けが15パーセント取得:80万 × 0.85 = 68万円
- 三次請けが10パーセント取得:68万 × 0.9 = 61.2万円
3社を経由すると、発注元が出した100万円のうち手元に届くのは61.2万円です。差額の38.8万円が経路上で引かれています。年間に直すと約466万円の差になります。
注意したいのは、マージンが掛け算で効くことです。「20パーセント+15パーセント=35パーセント」ではなく、実効の控除率は次のようになります。
- 1 − (0.8 × 0.85 × 0.9) = 1 − 0.612 = 約38.8パーセント
段数が増えるほど、1社あたりの率が低くても手取りは目に見えて減ります。
マージン率の目安と、開示のされ方
マージン率は会社や案件によって幅があり、公開されていないことも多くあります。一般に、単価に対して10〜30パーセント程度の範囲で設定されることが多いと言われますが、これも一つの目安にすぎません。案件の性質や契約形態によって上下します。
開示のされ方には3つのパターンがあります。
- 率を明示 — 「マージン率は一律◯パーセント」と公開している。比較しやすい。
- 金額のみ提示 — 「単価70万円」とだけ伝えられ、発注元の予算は分からない。もっとも多い形です。
- 問い合わせれば開示 — 聞けば教えてくれるが、自分から聞かないと出てこない。
金額のみ提示の場合、商流の深さを直接は確認できません。ただし、間接的に推測する手がかりはあります。
マージンは「取られている」だけではない
中間の会社が何もしていないわけではありません。商流の各社は、実際に次のようなコストとリスクを負っています。
- 案件の開拓と発注元との折衝
- 契約書の作成、法務チェック、与信管理
- 支払サイトの肩代わり — 発注元からの入金が3か月後でも、エンジニアへは翌月末に支払う、というケースがあります。この立替は資金力がないとできません。
- 未払いや途中終了が起きたときの回収リスク
- 稼働管理、請求処理、トラブル対応
問題になるのは、これらの実務をほとんど行っていない会社が経路に入って率だけ取っている場合です。「請求書を右から左に流しているだけの会社が2社挟まっている」という状態は、エンジニアにとっても発注元にとっても損失になります。
判断の基準は率の高さそのものではなく、その率に見合う機能を果たしているかです。手厚いフォローや安定した支払条件と引き換えなら、率が高くても納得できる場合があります。
企業側から見たコスト
発注する企業にとっても、商流の深さは無視できない問題です。
- 1人月100万円で発注しているのに、実際に作業する人へは61万円しか届いていない場合、企業は「61万円相当の人材」を100万円で買っていることになります。
- 商流が深いほど、要件の伝達に伝言ゲームが発生します。仕様の齟齬や、質問への回答が遅れる原因になります。
- 契約上、作業者と直接やり取りできる範囲が制限されることがあります。
同じ予算でより経験のある人を確保したい場合、商流を1段浅くするだけで実質的な調達力は大きく変わります。Partners は企業とエンジニアの間の経路を短くすることを狙った設計にしています。
商流を確認し、浅くしていく手順
面談や条件提示の段階で、次のように聞くと構造が見えてきます。角の立たない聞き方で十分です。
- 「今回、御社は発注元と直接ご契約でしょうか。それとも間に会社が入る形でしょうか」
- 「契約書上の発注者名と、実際の作業先の企業名は同じになりますか」
- 「稼働報告や請求書の提出先はどちらになりますか」
- 「マージン率は開示いただけますか」
3番目は特に有効です。稼働報告の提出先が作業先と違う会社であれば、そこが自分の契約相手であり、作業先との間に少なくとも1社あることが分かります。
構造が分かったら、次は浅くする番です。いきなり直接契約を目指す必要はありません。段階を踏むほうが確実です。
- いまの位置を把握する — 契約書の当事者名と、実際に作業する企業名を照合します。
- 1段浅い経路を探す — 三次請けの位置にいるなら、二次を狙う。同じ案件でも入口が違えば単価が変わります。
- 更新のタイミングで交渉する — 契約更新は条件を見直す自然な機会です。
- 経路の短い入口を確保しておく — 直接契約に近い形で募集している企業や、経路を明示しているサービスを日頃から把握しておきます。
商流は自分の実力と無関係に手取りを決める要素です。だからこそ、スキルを磨く前に一度確認しておく価値があります。
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