契約・法務

業務委託契約の基本|準委任と請負の違い、契約書で必ず確認する項目

「業務委託契約」は民法上の契約類型ではありません。準委任と請負で責任の重さがどう違うのか、契約書のどこを見て何を確認すればよいのかを、初見で使えるチェック観点として整理します。

文:Partners 編集部4

「業務委託契約書」と書かれた書面を受け取ったとき、その中身がどの契約なのかを説明できるでしょうか。実は「業務委託」という契約類型は、民法に定められていません。実務上の呼び名であり、中身は多くの場合、準委任請負のどちらかです。この二つは、負っている義務の重さが違います。同じ表題でも、引き受けている責任は同じではありません。

準委任と請負は「何に対して報酬が出るか」が違う

大まかには、次のように整理できます。

  • 準委任:業務を専門家として注意深く遂行すること自体に、報酬が出ます。求められるのは、善良な管理者としての注意を払って業務にあたることです。想定した成果に届かなかったとしても、進め方が適切であれば、直ちに債務不履行になるわけではありません。
  • 請負:仕事の完成に対して、報酬が出ます。完成していなければ、原則として報酬は請求しにくくなります。引き渡した成果物が契約の内容に適合しない場合には、修補や代金の減額といった責任を負うことがあります。

エンジニアの常駐型・稼働時間精算型の案件は前者、受託開発の一括請負は後者に近い設計になっていることが多いです。ただし、どちらにあたるかは表題ではなく条文の中身で決まります。「請負契約書」という表題でも、実質は準委任と評価されることがあります。逆もあります。

なお、2020年施行の改正民法では、準委任のうち、成果の引き渡しに対して報酬を支払う型も明文化されました。「準委任だから成果に責任はない」と単純には言い切れません。契約書の報酬条項が、稼働時間に対して払う書き方なのか、成果の引き渡しに対して払う書き方なのかを読み分けてください。制度の細かい適用は事案によって変わるため、最終的な判断は専門家に確認するのが安全です。

契約書で必ず確認する項目

初見の契約書は、次の順に見ていくと抜けが減ります。

  1. 業務範囲:何をやるのかが特定されているか。「その他甲が指示する業務」だけで終わっていないか。
  2. 成果物と検収:成果物の定義、検収の基準、検収期間、期間内に連絡がなかった場合の扱い。
  3. 報酬と支払期日:金額、精算の下限・上限時間、超過分と控除分の単価、締め日と支払日。
  4. 契約不適合責任:責任を負う期間と範囲。無償で対応する範囲がどこまでか。
  5. 知的財産権:著作権が移る時期。汎用的なライブラリや、以前から持っていたノウハウの扱い。
  6. 秘密保持:対象になる情報の範囲と、契約終了後に何年残るか。
  7. 再委託:できるのか、事前承諾が要るのか。
  8. 中途解約:どちらから、何日前に、どんな理由で解約できるか。
  9. 損害賠償:上限額の定めがあるか。間接損害や逸失利益が除かれているか。
  10. 指揮命令:発注者から直接、日常的な作業指示を受ける建て付けになっていないか。

この一文があったら確認する

次のような条文は、あること自体が問題とは限りません。ただし、意味を確認してから署名したい箇所です。

  • 「乙は甲の指示に従い業務を遂行する」…準委任や請負であれば、業務の進め方は受託者が決めるのが原則です。日常の作業指示まで含む趣旨なのかを確認します。
  • 「損害賠償の範囲はこれを制限しない」…上限も、間接損害の除外もない条文です。報酬額を上限にできないか相談します。
  • 「甲は何らの催告なくいつでも本契約を解除できる」…一方にだけ即時解除権がある形です。予告期間を対等にできないか確認します。
  • 「乙は著作者人格権を行使しない」…実務でよく置かれる条項ですが、対象の成果物の範囲が広すぎないかを見ます。
  • 「乙は甲の定める就業時間および就業場所に従う」…働き方の実態と合わせて読む必要があります。この点は偽装請負の観点でも確認が要ります。

契約書がないまま始まりそうなとき

口頭やチャットの合意だけで着手すると、条件の食い違いが後から出てきます。契約書がまだ届いていない段階でも、少なくとも業務範囲、期間、報酬、支払日、成果物の扱いをメールで送り、相手からの返信をもらっておいてください。正式な契約書がなくても、条件を明示したやり取りの記録は残ります。

なお、取引条件を明示することは、2024年11月に施行されたフリーランス新法でも発注者側の義務とされています。詳しくは同法の記事を参照してください。

Partners では、案件情報の段階で契約形態・精算幅・支払サイトを表示しています。契約書を読む前に、おおよその条件を把握できます。

迷ったときに見る場所

契約の解釈や、ある条項が有効かどうかの判断は、取引の実態によって変わります。制度の運用や書式の細かい点も更新されることがあるため、最新の内容は法務省、公正取引委員会、厚生労働省などの公式案内で確認してください。判断に迷う条項があるときは、署名前に相談したほうが、結果的に早く片づきます。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・法務判断については、税理士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。

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